栄養不良の中で、PEM(Protein Energy Malnutrition)は重要な問題となります。

PEMはクワシオルコル(kwashiorkor)と、マラスムス(marasmus)に分けられ、共に高い死亡率を示します。

クワシオルコル(kwashiorkor)

クワシオルコル(kwashiorkor):タンパク質の摂取不足が病因で、乳幼児の疾患です。低タンパクで穀物中心の生活を送る貧困国などでよく見られます。
三大徴候としては、浮腫、低アルブミン血症、脂肪肝が挙げられます。
低タンパク高炭水化物食事が続くと、アミノ酸が欠乏し、ヘモグロビン、トランスフェリン、アルブミン合成能の低下が起こります。これにより、低アルブミン血症をきたし、腹部膨満を起こします。
またタンパク質合成が低下すると、アポAなどのアポタンパクの不足が起こり、肝臓から各組織への脂肪輸送経路が遮断され、結果として脂肪肝が起こります。(脂質合成のための前駆物質は十分存在する)

血清総タンパク 4〜4.5g/dl(正常6~8g/dl)
血清アルブミン 2.0g/dl未満(正常3.5〜5.5g/dl)
血清遊離脂肪酸濃度↑
コレステロール↓
TG↓
貧血多し


クワシオルコルの子どもたち

マラスムス(marasmus)

マラスムス(marasmus):タンパク質不足とカロリー全体が不足しており、特にカロリー不足が強い状態をマラスムス(marasmus)といいます。

次の様な臨床症状が見られます。成長障害(標準体重の60%未満)、消耗(筋萎縮など)、感染症(下痢、呼吸器感染、慢性炎症など)主要栄養素の欠乏症状など。
クワシオルコルと違い、低アルブミン血症は軽く、インスリン濃度は下がり、またエピネフリン、コルチゾールの濃度が高くなっています。(身体に炎症があると、IFN、IL、TNF-α、TGFβなどの生理活性物質によりエピネフリン、コルチゾールの濃度が高くなります。またそれによりインスリン抵抗性が引き起こされます。)


マラスムスの子ども

栄養療法として

重度のクワシオルコル及びマラスムスの乳幼児に対しては

熱量:80〜90kcal/kg/day 及び タンパク質:1〜1.5g/kg
少量頻回で投与
様子をみて合併症がなければ
熱量:150kcal/kg/day(マラスムスでは250kcal/kg/day) 及び タンパク質:3〜4g
亜鉛、VItA、鉄も十分投与する

重度のクワシオルコル及びマラスムスの学童〜成人に対しては

熱量:20〜30kcal/kg/day 及び タンパク質:1〜1.5g/kg
約一週間後に
熱量:30〜45kcal/kg/day 及び タンパク質:3〜6g/kg
を目標にする

軽度のクワシオルコル及びマラスムスの乳幼児に対しては

150kcal/kg/day(就学前の幼児では120〜150kcal/kg/day) 及び タンパク質:3.5g/kg(就学前の幼児では2〜2.5g/kg)

クワシオルコルは治療の効果が比較的早くに現れるのに対し、マラスムスにおいては治療効果、回復も遅く、長期的な管理が必要になってきます。(リフィーディング症候群にも注意を要する)

高齢者と入院患者の栄養不良について

高齢者、入院患者などは潜在的なPEMの状態にある可能性があります。(ある報告によると、我が国の一般内科の入院患者の65%に低栄養がみられたとのことです。)また高齢者施設においても、血清アルブミン値が3.5g/dl以下の人は3〜4割に上るとのことです。栄養不良に陥ると免疫力が落ち、感染症などにかかり易くなってしまうので、しっかりとした栄養管理が重要になってきます。