病院管理栄養士の働き方

病院は管理栄養士の就職先としては、最もメジャーな場所の一つです。

病院の管理栄養士の専門性は給食〜医療へと非常に多岐にわたるため、働いてからの継続的な学習がとても大切です

ここでは病院の管理栄養士の働き方、また必要な知識などを紹介します。

病院の管理栄養士として知っておかなければならない知識

病院の種類は?

病院の種類によって、患者さんの性質・特徴が変わるため、必要とされる医療もそれに応じて変わります。当然、医療に栄養管理という側面から関わる管理栄養士も然りです。病院の種類というのは非常に多くありますが、主に以下の3つの要素に着目して考えていくと理解しやすいです。

  • 経営母体(民間・公立)
  • 医療機能別:高度急性期・一般急性期・亜急性期・回復期・慢性期
  • 病床種別(一般・療養・精神・感染症・結核)

まずはじめに、経営母体の違いからみていきます。経営母体は、管理栄養士の給料・待遇に非常に大きな影響を与えます。

経営母体:民間か公立病院か

民間病院行政機関や独立行政法人などの公的な機関に属さない病院のことです。民間企業と違い、非営利の経営が基本です。(非営利の経営が基本というのは、営利を目的として医療機関を運営することが医療法により禁止されているため)

公立病院都道府県や市町村など、自治体が運営する病院のことを言います。基本的には身分は公務員となります。

民間病院では、給与がそれぞれ独自に決められています。管理栄養士の評価が高い病院は、それなりに高く、そうでない病院では低く設定されている傾向があります。しかし、公立病院では、基本的に公務員であることより、病院として栄養管理に力を入れていようが、そうでなかろうが、公務員の俸給に応じた給与が一律に設定されています。

医療機能別:急性期か慢性期など

高度急性期・一般急性期

高度急性期の病院としては、がん研や大学病院などの専門性の高い病院が挙げられます。また一般急性期病院としては、地域の総合病院などが代表的です。

特徴として、入院日数の短い患者が多いが、重症患者が多いことが挙げられます。管理栄養士はICUや周術期の栄養管理など急性期ならではの栄養管理が求められます。もちろん外来患者の栄養指導をする場合は生活習慣病予防や、疾患別の栄養指導なども行います。

亜急性期・回復期・慢性期

亜急性期や回復期、慢性期の病院としては、リハビリ病院、クリニックや診療所などもこちらのカテゴリーに入ります。

特徴として、リハビリで自宅復帰を目指すなど、入院日数が長く、長期的な栄養管理が必要な患者が多いです。業務内容としては、慢性期の栄養管理の他、外来栄養患者の栄養指導が主たる業務となります。

病床種別

病床種別には、一般・療養・精神・感染症・結核病棟などがあります。これら単科病院として存在しているケースもあれば、一つの病院で複数の病床が併設されているケースもあります。

それぞれの病床で診療科や患者特性が大きく異なってくることより、病院就職希望で、就活予定でしたら、どんな患者の栄養管理を行いたいかによって、慎重に病院を選ぶ必要性があります

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給食の経営形態について

直営と委託について

病院の給食は主に、直営形態と委託形態に分けられます。

・直営形態:病院側で雇ったスタッフ(管理栄養士や栄養士、調理師など)によって病院給食が提供されること。

・委託形態:委託給食会社に病院給食管理全般を委託すること。

現在の主流

現在の主流は委託形態が中心となってきており、給食管理業務は委託会社に任せ、病院の管理栄養士は、栄養指導や病棟の入院患者の栄養管理に携わるなど、実質給食提供と栄養管理が分業されています。

分業による経営の効率化というメリットもありますが、新卒で病院側管理栄養士となり、その先ずっとその病院に勤めている限り、給食管理業務が覚えられないというデメリットもあります。給食管理が覚えられないということは、管理栄養士にとっては大きなデメリットです。

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給料・賞与(ボーナス)は?

インターネット上にはさまざまなデータがありますが、きっちり調査された妥当性の高いデーターは、ほぼありません。

民間か公立か
公立病院勤務の管理栄養士の優位性

一般的に管理栄養士に関しては公立病院勤務の方が、民間病院勤務の管理栄養士より高い傾向となります。これはなぜかというと、前述したとおり、公立病院の管理栄養士は管理栄養士である前に、公務員だからです。したがって給与は公務員基準の棒級が適応されるのです。

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民間病院の管理栄養士は、基本給の額面18万〜30万程度の層が多く、また現実的なラインであるように思います。

賞与(ボーナス)は0.5〜6カ月/年程度でしょう。したがって年収は残業代を含まないと200~630万円程度であると考えられます。

公務員管理栄養士よりも高い給与をもらっている者もいる

もちろん公務員よりはるかに高い給与をもらっている管理栄養士も多数います。年収630万というのは、勤め先からだけの報酬で、(私が知っている中で)一番もらっている人の参考額です。また給与や賞与(ボーナス) は病院の経営形態や経営状況に大きく左右されます。

病院の規模によって待遇差はあるのか?

大規模病院の方が給与が良いと思われがちですが、一概にそうとも言いきれません。大病院でも給与が安いところもあれば、比較的小規模病院でも給与が良いところもあります。民間病院の場合は、あくまでそこの病院での管理栄養士の地位や、経営状況によって待遇は異なってくることを覚えておいてください。

管理栄養士管理栄養士

年次昇給があるか、一年でどれくらい上がっていくか、年間有給数がどれくらいか、ということを合わせてチェックしておくことも重要です。

私の経験談を載せておきます
某私立J大学病院

① 病院(某大学病院 経営状況:非常に良い)
新卒基本給:18~19万
資格手当:3万
家賃補助:上限2万7千円まで
交通費:上限5万円まで
年次昇給:7千円
賞与:年間6.2ヶ月分

某国公立病院

② 病院(国公立病院 経営形態:公立 経営状況:やや悪い)
新卒基本給:18~19万
家賃補助:上限8千円まで
交通費:上限5万円まで
年次昇給:5千円
賞与:年間4.2ヶ月分

管理栄養士管理栄養士

① の病院の方が給与が良く、一見良さげですが、仕事は激務で年間休日も少なく、有給も自由取得が出来ませんでした。また正月にも出勤していました。
② の病院は、①ほど給与はよくありませんが、週休2日は確保されており、有給も自由取得ができるため、非常にワークライフバランスが取れており、今の職場の方が気に入っています。

休日や有給について

直営形態の場合

直営形態の病院は365日、1日も休むことなく食事を提供することが必須ですので、大体はシフト制となります。

基本的には週休2日で、平日休みとなります。

委託経営の場合

病院で委託業者が入っており、施設側(病院側)の管理栄養士は業務が患者の栄養管理が種となる関係で、休日は暦通りになることが多いです。

共通点

よほどブラックな職場でない限り、年次有給は最大20日、夏季休暇など5日間はもらえます。国の働き方改革で、これまでブラックな働き方が蔓延していた栄養士業界も、すこしずつ改善の兆しはみられてきています。

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私は、最初の病院のときは、月に6日程度の休みで、かつ有給も自由取得がほとんどできませんでしたが、次の病院では、暦通りの出勤で、かつ年20日の有給を自由取得できたため大変満足です。

病院管理栄養士の具体的な仕事内容は?

給食管理と栄養管理の2つが代表的です。

給食管理
食札・食数管理

病院では医師が指示した栄養量や食種が記載された食事せんというデータに準じ、食事を提供します。

食札(ショクサツ)とは

食事せんに応じ、名前や病棟、食事内容が記載された札を作り、これに基づいて、それぞれの患者さんの体の状態に合わせた食事が作られ、患者さんのもとへ配食されるわけです。入院時、病院給食が、それぞれ患者さんのところへ配られるときに、お盆の上に名前の書かれた札があると思います。これが食札です。

管理栄養士管理栄養士

機会があれば一度じっくりみて頂くことをおすすめします。色々なことが記載されていますよ。

食札には、食種だけでなく、エネルギーや、形態、アレルギー情報、嗜好、さらに付加食品まで記載されています。

食札・食数管理業務は、医師の指示のもと日々変わる患者情報、食事せんを基本に、どのくらい食種が何人いるのか、アレルギーはどれくらいいるのか、ということを毎食把握・管理していきます。病院給食の司令塔的な業務です。

厨房業務

基本的に厨房業務は調理師が主体となって行いますが、特別な食事、例えば離乳食や、ペースト食、無菌食などは管理栄養士が厨房に入ることもあります。
管理栄養士の地位が低い施設では、調理師とほとんど同じ仕事をするところもあります。
治療スケジュールが決まっている関係上、毎食時間通りに病棟へ上げる必要性があるので、安全性はもちろん、正確さ、速さが命となってきます。衛生管理ももちろん重要です。

献立業務

施設の患者特性に応じた献立を作成します。献立の内容によって、食材費用やおいしさ、供給栄養量に違いが出るため、病院給食の質を決定付ける、とても重要な業務の一つです。

献立業務は、新しいものを1から作るというより、既存の献立を手直しをしていく作業、つまり献立メンテナンスが主です。
病院では、4週間〜(多いところでは12週間程度)を1サイクルとした、いわゆるサイクル献立としているところが多いですが、定期的に行事食と呼ばれる、季節に応じた特別食を提供しますので、こういった行事食の際には、一から献立を作る場合があります。

管理栄養士管理栄養士

この時ばかりは少し予算をオーバーすることもありますね

献立作成は、管理栄養士や栄養士の腕の見せどころです。治療食献立を作成する際は、通常の一般食(常食)を基に治療食(塩分制限食や糖尿病食、腎臓病食)を作っていきます。

したがって常食作成はとても重要です。常食でいかに美味しく、安く、栄養価が高く、かつ展開しやすい献立を作れるかは、管理栄養士の腕次第です。

展開食ってどうやって作るの?

食事は常食をベースに展開していくときに、食材そのものを変えるか、調理法を変えるかの主に2パターンで栄養を調整します。例えば、エネルギーを下げたい場合は、鶏もも肉から鶏むね肉に変更したり、フライをパン粉焼きに変更させたりなどです。展開が上手な管理栄養士は、アイディアを沢山持っており、非常にバラエティ豊かだけれども、複雑にし過ぎない絶妙なバランス感覚で見事な献立を作成します。おすすめ書籍👉給食施設のための献立作成マニュアル第9版

発注業務

上記で説明してきた献立作成をもとに発注業務を行います。
発注業務はとても重要で、どこの施設でもよくあることですが、食材を発注し忘れた日には、近所のスーパーへ行き、買ってくることもあります。また大きい病院だったら、業者に言えば、すぐに対応してくれたりもします。

急性期の病院は発注もハード

特に急性期の病院は、患者の入れ替わりも激しく、食数や食種の数など刻々と変化していくので、発注コントロールは非常に大事になってきます。注文しすぎても、特に生鮮食品の場合は、廃棄しなくてはならなくなり、経営効率の観点から悪影響を及ぼします。
特に、年末年始や、お盆など、発注先の業者がお休みのときに発注ミスをするととんでもないことになります。

管理栄養士管理栄養士

私が給食管理業務を主として行なっていた時代には、幸い運良くこういったミスをすることはありませんでしたが、忙しい管理栄養士業務では、こういったミスは頻繁に起こり得るため、中々ハードな業務の一つです。こういった業務にAIなどが生かされるようになれば良いのですが。。

栄養管理
栄養管理計画書の作成

栄養管理計画書は主にスクリーニングツールなどを使い、患者の栄養管理上における問題を抽出し、それに基づいた栄養計画を立てていくものです。身長や体重、既往歴、現病歴、体重変動、採血結果、最近の食事摂取状況などがよくスクリーニングツールの項目として用いられています。

栄養指導

管理栄養士による栄養指導は、診療報酬加算が認められているもの一つです。
(診療報酬加算というのは、特定の医療行為に対しての価格のことです。)
初回には30分の栄養指導で260点(1点=10円)
2回目以降は200点の算定が取得できます。

すなわち、初回の患者には、30分の栄養指導で2600円を請求することができるわけです。これは病院の収益となります。

※栄養指導をする際は、基本的には医師の指示のもとで、行っていく必要性があります。また、栄養指導でお金をもらうには(=算定を取るには)、特定の要件を満たす必要があります。

管理栄養士管理栄養士

栄養指導で算定を取ることができることは、管理栄養士が、栄養指導でお金を稼げるということで、病院の経営者が管理栄養士を採用したいという理由となるものの1つです。

管理栄養士が病院の経営にも貢献できる業務が沢山増えていくと、管理栄養士の価値も上がってくるかもしれません。

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栄養指導の難しさ

食事というのは、その人のライフスタイルや生き方、価値観などが大きく影響しており、また個人のとても大きな尊厳であるため、慎重に相手の情報を聞きながら、最も無理なく、継続可能性があり、かつその中で効果的である指導をしなくてはなりません。また、時には年上や、科学的知見の豊富なエリートに指導しなくてはいけない場面もあります。トータルとしての人間力が試される場であり、とても難しく感じるときもあると思います。おすすめ書籍👉ライフスタイル改善の成果を導くエンパワーメントアプローチ: ─メタボリック症候群と糖尿病の事例をもとに─

管理栄養士管理栄養士

栄養指導は、患者さんの行動変容を促していくものですから、1回だけでなく、継続して粘り強く行っていくことを推奨します。これが患者の利益・病院の利益のためにもなります。相手の信頼を勝ち取ることが大切ですね。

NST(栄養サポートチーム)

NST(Nutrition Support Team, 栄養サポートチーム)とは、患者さんに最適の栄養管理を提供するために、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、理学療法士、言語聴覚士、歯科医師、歯科衛生士などで構成された医療チームのことです。

管理栄養士管理栄養士

基本的に管理栄養士が中心となります。

医療における栄養管理は、単に栄養学や食品の知識だけなく、臨床的な知識も必要です。
患者の病態や治療方針をしっかり把握し、それに応じた栄養管理をしていく必要性があります。
刻々と変化していく患者の状態をみながら、現在患者はどういう状態なのか、疾患の重症度は?検査値は?代謝変動は?薬物治療の内容は?点滴は何が入っているか。今後の方針は?そういったことを全て勘案し、現状の栄養管理の評価を実施し、必要時主治医に提案していきます。医療における知識のアップデートは常に必要で、栄養の知識だけでなく、各疾患ガイドラインや、論文をしっかり読み、その心を理解し、実践で使えるようにコンバートできる能力が必要です。

また多職種が関わることより、コミュニケーション円滑のためにも、傾聴力、理解力、プレゼンテーション能力も必要となります。これに加え、NST専従管理栄養士は、学会での情報発信も必要ですので、統計学をはじめとした解析力も必要です。

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おすすめ書籍まとめ

献立作成に関して基礎から学べる。一冊あれば十分 これは、管理栄養士であるのならば絶対に読むべき一冊。早ければ早いほうが良いです。特に最初の総説は必読 科学的根拠に則った栄養指導が出来るようになる一冊。 NSTやるのなら外せない。まず、この内容を把握していないと話にならないレベルです。