Artificial and natural sweeteners

人工甘味料は、様々な種類が開発・発売されています。日本では主に6つの人工甘味料が厚生労働大臣によって認可されています。この記事では、それら人工甘味料についてと、身体に与える影響などに関して国内外の報告をまとめています。

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人工甘味料とは

甘味料の分類

人工甘味料とは、非糖質系甘味料に分類された、人工的に化学合成された甘味料のことを言います。非栄養甘味料・高甘味度甘味料・低エネルギー甘味料ともよばれています。

元来、砂糖不足に対する代替食品という扱いであったのですが、現在はそれぞれの特性や機能性により様々な使われ方をされています。

管理栄養士管理栄養士

ちなみにソルビトールやキシルトールなどの糖アルコールも、人工甘味料と言われることもありますが、糖アルコールは自然界にも存在する上、工業的に製造されたものでも、分子式に相違がないことより、人工甘味料に分類されていません。

人工甘味料の特徴として

  • 苦みが少ない
  • 甘みの持続が長い
  • 熱に安定している
  • 水に溶けやすい

これらの性質より、食品に付加する目的で非常に使いやすく、清涼飲料水や菓子類などで幅広く用いられています。

日本で使われている人工甘味料の種類

日本で、厚生労働大臣によって許可されているものは、以下があります。

サッカリン 

Farlbergにより1878年に発見された初の人工甘味料です。第二次世界大戦前までは、糖尿病患者に用いられていた経緯が有ります。食品添加物として認可されたのは1948年でした。1960年代にアメリカでの動物実験で発がん作用が疑われましたが、その後発がん作用は否定されています。

saccharin

サッカリンの甘味度

甘味度:400-500(ショ糖を1とした時)

サッカリンの代謝

代謝:大部分が胃で吸収され、48%でその98%以上が排泄されます。血漿中濃度は1-1.5h 半減期は2.5hと言われています。

サッカリンの一日あたりの許容摂取量(mg/日)

5mg/kg体重/日

アスパルテーム 

アスパルテームは1965年にアメリカのサール製薬会社G. D.サール社の研究員によって開発されました。R. H. MAZUR, J. M. SCHATTER and A. H. GOLD KAMP: J. Amer. Chem. Soc., 91, 2684 (1969) 

Aspartame

アミノ酸であるアスパラギン酸とフェニルアラニンを結合させて製造されます。苦味が少なく、砂糖に似たすっきりとした甘味を持ちます。また、常温では水に溶けにくく、吸湿性も低いです。コーヒー、医薬品などの苦味を隠す効果や、果物などの風味を増強する効果があるといわれています。 低カロリーにするために使われることが多く、近年はアセスルファムKやスクラロースとの併用の流れが進んでいるようです。菓子では、キシリトールなどの糖アルコールの甘味不足を補う目的で使用する場合があります。スクラロースに比べて熱に弱いことや、飲料では酸性の炭酸・果汁系飲料には使用できるのですが、中性の缶コーヒーには適性がないことなど使用が限られます。

1983年に食品添加物として認可されました。食品ごとの使用基準は設定されていません。

アスパルテームの甘味度

甘味度:200(ショ糖を1とした時)

アスパルテームの代謝

代謝:通常のタンパク質やアミノ酸と同様の代謝を受けるため、エネルギー換算係数は4kcal/gで砂糖と同じですが、高甘味度であるため少ない使用量で済み、実質的に低カロリーに抑えられると言われています。また、アスパルテームは体に入った直後に吸収・分解されフェニルアラニンになります。すると、急速に血中のフェニルアラニン濃度が上昇し、セロトニンなどの脳内伝達物質の分泌が阻害されるといわれています。Neurotoxicology. 1994; 15: 535-44

aspartame phenylalanine

アスパルテームの一日あたりの許容摂取量(mg/日)

40mg/kg体重/日

アセスルファムK  

アセスルファムKは、酢酸由来のジケテンと塩素安定剤(水泳用プールなどに使用)や酸やニトリルの洗浄用に使われるスルファミン酸、水に溶かすと硫酸になる三酸化硫黄から合成される、オキサチアジノンジオキシド誘導体の一つで、1967年、ヘキスト(Hoechst AG. 現ニュートリノヴァ社 Nutrinova)のドイツ人化学者カール・クラウス (Karl Clauß) により1967年に偶然発見されました。Clauß, K. and Jensen, H. (1973). Oxathiazinone Dioxides – A New Group of Sweetening Agents. Angew Chem Engl 12, 876. 

Acesulfame K

甘味を感じる速さが早く、後引きのない甘味を持ちますが、特有の苦みを感じることがあると言われています。甘味度は砂糖の約200倍ですが、アセスルファムKの濃度が低いほど甘味度が高くなることが特徴的です。また、アスパルテームなどの甘味料との併用によって、甘味の質が砂糖に近くなります。熱や酵素、微生物に対して安定であり、水溶液中でも高い安定性を示します。日本では、2000年に指定添加物になり、食品ごと、飲料、菓子(ガム、キャンディ、錠菓など)漬物などに使用基準が定められています。他の甘味料と併用して使われることが多く、主な甘味料としてではなく、補完する役割でのニーズが高いと言われています。アセスルファムK単体での使用は、漬物用で一部見られます。

指定添加物として使用が認められて以来、現在も飲料分野などで使用が拡大しているようです。高甘味度甘味料のニーズが高まるとともに、アセスルファムKのニーズも高まるものと考えられています。

アセスルファムKの甘味度

甘味度:200(ショ糖を1とした時)

アセスルファムKの代謝

代謝:吸収率はほぼ100%(尿中排泄率より)24h以内に尿中排泄97.5-100% 糞中排泄0.7-0.8%、7日間に全量排泄される。血漿中濃度は1-1.5hで最大。半減期は約2.5h。エネルギー換算係数は0kcal/g です。虫歯の原因にならず、血糖値の上昇やインスリンの分泌にも影響を与えないとされています。

アセスルファムKの一日あたりの許容摂取量(mg/日)

15mg/kg体重/日

スクラロース  

スクラロースは、砂糖のハロゲン誘導体で、砂糖(ショ糖)の3か所の水酸基が塩素原子に置き換わった構造をしており、1976年にイギリスでテイト&ライル社 (Tate&Lyle PLC) によって、ショ糖(スクロース)を化学修飾することで開発されました。

Sucralose

日本では、1999年に指定添加物となり、食品ごとに使用基準が定められています。

砂糖に似た、後味のない甘味を持ち、甘味度は砂糖の約600倍と高いと言われています。熱や酸に強く、水、メタノール、エタノールに溶けやすく、また、虫歯の原因にならないとされています。飲料(スポーツドリンク、コーヒー飲料など)、製菓・製パン、冷菓・デザートなどによく使用されています。ノンカロリー・低カロリーを目的として使われることが多く、一部、苦みを隠す目的での使用もみられます。前述したように、アスパルテームの単独使用から、スクラロースとアセスルファムKの併用へ切り替えるケースも増えており、他の甘味料と組み合わせての展開が進むと言われています。熱、酸などの加工過程での対応可能な範囲が広いため、焼き菓子や製パンなどではスクラロースに適性がある。不得手な分野が少ないことから、用途は今後も広がる可能性がある。

スクラロースの甘味度

甘味度:600(ショ糖を1とした時)

スクラロースの代謝

代謝:細胞で代謝されない。尿中排泄10-30%、糞中排泄60-90%。最大血漿値は30min-3h 半減期は2.5h-23h エネルギー換算係数は0kcal/g である。

スクラロースの一日あたりの許容摂取量(mg/日)

15mg/kg体重/日

スクラロースに関する有害事象報告

腸内細菌を乱す可能性があることが報告されています。 Abou-Donia MB, El-Masry EM, Abdel-Rahman AA, McLendon RE, Schiffman SS. Splenda alters gut microflora and increases intestinal p-glycoprotein and cytochrome p-450 in male rats. J Toxicol Environ Health A. 71(21):1415-29.2008.

また血糖やインスリンに作用することが報告されています。

ネオテーム   

ニュートラスイート社がアスパルテームを改善し、作られたものがネオテームです。Claude Nofre, Jean-Marie Tinti (2000).”Neotame: discovery, properties, utility” Food Chemistry 69, pp.245-257

neotame

食品添加物としては新しく、日本では2007年に食品添加物として許可されました。

ネオテームの甘味度

甘味度: 10000(ショ糖を1とした時)

ネオテームの代謝

代謝:最大血漿濃度は約 0.4 -1時間で、半減期 0.6 -1.5時間と言われています。

ネオテームの一日あたりの許容摂取量(mg/日)

1.0 mg/kg 体重/日

ネオテームに関する懸念事項

アスパルテームに米国環境保護庁が最も有害な化学物質リストに掲げる「3・3―ジメチルブチルアルデヒド」を加えて精製されていることが問題視されています

アドバンテーム

味の素が開発。2014年認可されました。

Advantame

アドバンテームの甘味度

甘味度:20000(ショ糖を1とした時)

アドバンテームの代謝

アドバンテームは L-フェニルアラニン化合物ですが、吸収率が最大で20%である上に、主な血中、尿中及び糞中代謝物は ANS9801-acid であることから、体内においてフェニルアラニンが生じる量は非常に低く、アドバンテームの摂取によってフェニルアラニン摂取量が増加することによるリスクは無視できると判断されています。

アドバンテームの一日あたりの許容摂取量(mg/日)

5.0 mg/kg 体重/日

人工甘味料含有飲料と糖尿病などの生活習慣病との関連(疫学的観点から)

人工甘味料含有飲料水の摂取量と糖尿病の発症を観察した研究はいくつか報告されていますが、人工甘味料含有飲料水の摂取量が肥満と独立して糖尿病発症と関連を認めたという報告と、関連は認めるものの肥満を考慮すると関連はなかったという報告とがあり、結果は一様ではありません。Imamura F、 O’Connor L、 Ye Z、 et al.Consumption of sugar sweetened beverages, artificially sweetened beverages, and fruit juice and incidence of type 2 diabetes: systematic review, meta-analysis, and estimation of population attributable fraction. the British Medical Journal. 351. h3576. 2015.

しかし、人工甘味料に関する報告はネガティブなものも多く、以下2つを紹介します。

Nettleton JA, Lutsey PL, Wang Y, Lima JA, Michos ED, Jacobs DR Jr. Diet soda intake and risk of incident metabolic syndrome and type 2 diabetes in the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA). Diabetes Care.(4):688-94. 2009.

人工甘味料とショ糖を食べた時の血糖値やインスリン感受性を調べたところ、人工甘味料を食べた時の方がショ糖を食べた時よりインスリンの感受性が23%減り、血糖値のピークが高くなってしまったという報告があります。これは、糖分の取りすぎによる血糖値の異常ではなく、人工甘味料が糖代謝に何らかの悪影響を及ぼすものと考えられています。この報告では因果関係を特定することはできませんが、少なくとも毎日人工甘味料含有飲料を摂取すると、メタボリックシンドロームと2型糖尿病発症リスクが高くなると考えられます。

N Engl J Med. 2012: 367; 1397-1440

人工甘味料の使用はメタボ、糖尿病、高血圧、心疾患のリスクを高めると報告されています。

日本においては、以下の報告があり、摂取する容量によって糖尿病発症のリスクは高くなりそうです。

Sakurai M、 Nakamura K、 Miura K、 et al . Sugar-sweetened beverage and diet soda consumption and the 7-year risk for type 2 diabetes mellitus in middle-aged Japanese men. European Journal of Nutrition 53. 251-258. 2014.

富山県の金属製品製造業事業所の従業員を対象に、2003年に栄養調査を行い習慣的な人工甘味料含有飲料水の摂取量を調査した。 このうち糖尿病のない35~55歳の男性2037人について、毎年の健康診断の結果を追跡して糖尿病発症を確認したところ、2010年までの7年間で新規に170人が糖尿病を発症した。2003年の人工甘味料含有飲料水の摂取量と糖尿病発症との関連を検討すると、人工甘味料含有飲料水を週に1カップ(237ミリリットル)以上飲む人は、飲まない人と比べて糖尿病発症の危険が1.7倍高かった。

管理栄養士管理栄養士

実際に、もともと糖尿病になりやすい肥満者がダイエット清涼飲料水を好んで摂取している可能性はあるので、結果の解釈には注意が必要そうです。しかし、近年になり、人工甘味料の血糖値を介さない糖代謝への影響についていくつかの可能性が報告されており、ダイエット清涼飲料水の摂取が糖尿病のリスクを高めるメカニズムについても明らかになりつつあるようです。

人工甘味料の糖代謝への影響が考えられるメカニズム

 人工甘味料が血糖値の上昇もなく、熱量も無視できる程度であるにもかかわらず肥満や糖尿病と関連する理由として、人工甘味料の利用による節減エネルギーを過大評価したり、摂取エネルギーを節減できたことに安心したりすることで、余分に食べ過ぎてしまうのではないか、という心理的な理由も考えられてきました。しかし近年、人工甘味料の腸内細菌叢に及ぼす影響や、味覚に及ぼす生理的な反応が摂食行動に影響を与える可能性が報告されています。

人工甘味料と腸内細菌叢

最近、人工甘味料による糖代謝の影響を考える上で重要視されているのが腸内細菌叢(腸内フローラ)です。

腸内細菌叢

マウスにブドウ糖または人工甘味料の一つであるサッカリンを投与すると、サッカリンを投与されたマウスでは、糖負荷試験で耐糖能異常を認めたそうです。サッカリンを投与されたマウスとブドウ糖を投与されたマウスを比較すると、両者では異なった腸内細菌叢の分布を示したとのことです。また、サッカリン投与マウスの耐糖能障害は抗生剤を投与すると改善すること、サッカリン投与マウスの腸内細菌叢やサッカリン存在下に培養された腸内細菌を無菌マウスへ移植すると耐糖能障害を引き起こすこと、ヒトにおいてもサッカリン投与により耐糖能異常を認めたものでは投与前後で腸内細菌叢の変化を認め、投与後の腸内細菌叢をマウスに移植することで耐糖能異常を引き起こすこと、などの結果から、サッカリンによる腸内細菌叢の変化により耐糖能異常が生じていると考えられました。機序としては、サッカリン投与により腸内細菌のグリカン分解経路が活性化し、それに伴いエネルギー吸収の増加につながる短鎖脂肪酸が腸管内に増加することが示され、そのことが耐糖能異常を誘発したと考えられています

Suez J、 Korem T、 Zeevi D、 et al .Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota Nature 514. 181-186. 2014

このように、人工甘味料による肥満・耐糖能障害の発症の機序はいくつか想定されているものの、まだ不明な点が多く、さらなる動物実験やヒトを対象とした研究が必要と考えられています。

人工甘味料摂取は食欲や衝動的な摂食に繋がる可能性がある

本来、日常の食事の中では、甘味の感覚に続いて血糖値が上昇することが条件付けされているが、人工甘味料の場合は甘味の後に血糖値の上昇が起こらないため、エネルギーの恒常性が崩れ、脳の反応を介して摂食行動などが促進され、むしろ太りやすくなる、というものです。また、人工甘味料の強い甘味に慣れると、甘味に対する感覚が鈍麻し、より甘い糖質を多く摂取する可能性もあります。最近では、味覚を感じる細胞が舌だけでなく腸管に存在することも明らかになり、腸管で甘味を感じると、腸から分泌されるインクレチンというホルモンがインスリン分泌を促進したり、腸からの糖の吸収が促進されたりすることが報告され、腸管での味覚刺激が糖代謝に影響する可能性も考えられています

Blundell, J.E. et al. PARADOXICAL EFFECTS OF AN INTENSE SWEETENER (ASPARTAME) ON APPETITE.The Lancet, Volume 327, Issue 8489, 1092 – 1093

Paul M. Brala, Richard L. Hagen. Effects of sweetness perception and caloric value of a preload on short term intake, Physiology & Behavior, Volume 30, Issue 1, 1983, Pages 1-9,

K. Elfhag, P. Tynelius, F. Rasmussen. Sugar-sweetened and artificially sweetened soft drinks in association to restrained, external and emotional eating.Physiology & Behavior. Volume 91, Issues 2–3. Pages 191-195, 2007.

人工甘味料に関してアメリカ心臓学会&糖尿病学会の見解

アメリカでは2012年に、心臓学会と糖尿病学会が合同でCirculationとDiabetes careに声明を発表しています。1965年~2004年まで人工甘味料の消費量が3%~15%へ上昇したとのことです。

また体重の増減・エネルギー摂取量・炭水化物摂取量・心血管疾患・糖尿病のリスク因子として、糖類を人工甘味料に変えることが原料や血糖コントロールに有用となるかわからない(エビデンスがない)とした上で、しかし人工甘味料をうまく使い、糖類の摂取量を抑えることにより、減量や血糖コントロールなどの有益な効果に繋がる可能性があるとのことです。

その他日本アレルギー学会の報告

2013年5月11-12日,第25回日本アレルギー学会春季臨床大会(横浜市)が開催され、そこで「人工甘味料による即時型アレルギー」に関する演題が報告されたとのことです。はしもと小児科HPにて詳細が報告されていますので、抜粋いたします。

近年,エリスリトールなどの人工甘味料による即時型アレルギーの症例が報告されています.「即時型食物アレルギー全国モニタリング調査」の協力医療機関を対象に,エリスリトールなどの人工甘味料の摂取による即時型アレルギーの健康被害症例が調査されました.1次調査では1079施設を対象に当該症例の有無が調査されました.有りと回答した18施設を対象に,2次調査が実施されました.

調査の結果,14例の症例が報告されました.内訳は男4例,女10例で,平均年齢は27.4歳(4歳から64歳),初発時の平均年齢は20.1歳(2歳から52歳)でした.症状発現時間は摂取直後から120分と幅がありました.エリストールの確定例が最多で6例でした.エリスリトールによる症例では,アレルギー症状を3-10回以上繰り返していました.基礎疾患としてはアレルギー性鼻炎,気管支喘息,アトピー性皮膚炎などがありましたが,特別な傾向はありませんでした.症状としては蕁麻疹などの皮膚症状が最多で,呼吸器症状,消化器症状,アナフィラキシーもありました.キシリトール,ステビア,アセスルファムK,ソルビトール,スクラロース,サッカリン,ガラクトオリゴ糖,マルチトースなど他の人工甘味料による症例も報告されました.

5歳の男児例では,ダイエットゼリーを食べて40分後に咳込みが始まり,目が腫れてからだ全体が真っ赤になり,経皮酸素分圧(SpO2)が95%まで低下しました.ダイエットゼリーには5gのエリスリトールが含まれていました.検査所見では,ハウスダスト,ダニ,カモガヤが陽性でした.ゼリー飲料でprick to prick testを実施しましたが,陰性でした.その後,同じゼリーを4分の1食べたところ,蕁麻疹と嘔吐が起きました.食品メーカーからエリスリトールとコンニャク末を取り寄せてprick to prick testを実施しましたが,いずれも陰性でした.エリスリトールで皮内反応を実施したところ,0.1mg/mlの濃度で陽性を示しました.負荷テストを実施したところ,100mg,300mg,1gの摂取では症状誘発はありませんでした.しかし,3gの負荷では10分後に咳込みが始まり,顔面にじんましんが出現し,SpO2が92%まで低下しました.その後,全身にじんましんが起きました.アドレナリン投与,ステロイド剤の静注,酸素吸入などで軽快しました.他にも症例が報告され,28歳女性では,prick to prick testは陰性,皮内テストは陽性,ヒスタミン遊離試験は陰性でした.50歳女性では,prick to prick test,皮内テスト,ヒスタミン遊離試験が全て陽性でした.症例により,症状や検査所見は多様でした.

エリスリトールはメロン,梨,ぶどうなどの果実やワイン,醤油,味噌などの発酵食品に含まれている天然の糖アルコールです.自然食品における含有量は微量です.化学式はC4H10O4で,分子量は122と非常に小さい物質です.味が良く大量に摂取しても下痢が少ないために,ダイエット飲料やダイエット食品に比較的多い量が添加されています.一部の歯磨き粉や下剤にも添加されています.通常は分子量が大きい蛋白質でない限りは抗原性を発揮せず,アレルゲンには成り得ません.エリスリトールは分子量が小さいことから,体内に吸収された後にハプテンとして蛋白質に結合することにより抗原性を発揮したと推測されています.

エリスリトールや各種オリゴ糖は食品扱いのため法律上の表示義務がありません.一方,キシリトール,サッカリンNa,ソルビトール,ステビアは食品添加物のため,表示義務があります.エリスリトールや各種オリゴ糖については,行政上の取り扱いの変更が必要でしょう.

エリスリトールなどの人工甘味料は,ダイエット食品などでの使用量が増えています.原因不明のアレルギー症状やアナフィラキシーの場合には,人工甘味料を含めて病歴の確認が必要です.

はしもと小児科HPより引用:https://zousantsushin.jp/2013051016.html

おまけ:食品添加物の安全性を確認するための主な試験

一般毒性試験 28日間反復投与毒性試験 実験動物に28日間繰り返し与えて生じる毒性を調べる
90日間反復投与毒性試験 実験動物に90日間以上繰り返し与えて生じる毒性を調べる
1年間反復投与毒性試験 実験動物に一年以上の長期間にわたって与えて生じる毒性を調べる
特殊毒性試験 繁殖試験 実験動物に二世代にわたって与え、生殖機能や新生児の生育におよぼす影響を調べる
催奇形性試験 実験動物の妊娠中の母体に与え、胎児の発生、生育におよぼす影響を調べる
発がん性試験 実験動物にほぼ一生涯にわたって与え、発がん性の有無を調べる
抗原性試験 実験動物でアレルギーの有無を調べる
変異原性試験 (発がん性試験の予備試験) 細胞の遺伝子や染色体への影響を調べる

まとめ

人工甘味料は、社会情勢や食料不足などの事情に対応するため、そもそも人類の役に立つために開発されてきました。この記事でも繰り返し述べてきたましたが、安全性に関しては政府系機関によって、度重なる検証は行われてきています。しかし、少なくとも本邦においては、長期摂取による影響を検討した報告がないことや、添加物を複合摂取したときの安全性、特定の疾患がある時の安全性、腸内細菌の影響などを考慮した場合は、まだまだわからないことだらけです。健康な個人に関していうのであれば、常識的な範囲内で、たまに摂取するくらいであればあまり身体に悪い影響はないと考察しますが、水のようにガブガブ摂取すると、やはり悪影響は出てきそうです。人工甘味料のもともとの目的を顧みて、白黒つけることは慎重になるべきですが、やはり「誰が」「どのように」「どれくらい」摂取するのかということをしっかりアセスメントした上で、考えていく必要性がありますね。

参考文献

https://www.jafaa.or.jp/tenkabutsu01/anzen 日本食品添加物協会より

・甘味の系譜とその科学 吉積智司、伊藤汎、国分哲郎 著((株)光琳)

・砂糖百科 高田明和、橋本仁、伊藤汎 監修((社)糖業協会、精糖工業会)

・砂糖の科学 橋本仁、高田明和 編((株)朝倉書店)

・う蝕予防のための食品科学 大嶋隆、浜田茂幸 編(医歯薬出版(株))

・甘味料発展の系譜と清涼飲料 菅野智栄 (ソフト・ドリンク技術資料 №108、109)

・新食品開発用素材便覧 吉積智司、伊藤汎、太田明一、田村力 編((株)光琳)

・指定品目食品添加物便覧 岸眞之輔 編((株)食品と科学社)