管理栄養士のブラック職場

ブラック職場とは何なのでしょうか。ここでは暫定的に、「人間関係、心身への過度なストレス、労働待遇等の一般的に考えられる労働環境のパラメータを他職場と比較した場合、著しく劣っている職場」のことをブラック職場と表現しています。

この記事では、主に病院に就職希望の新卒の管理栄養士、あるいは学生、またはその保護者の方向けに書いたものです。少しでも良い職場に就職するための、参考となれば幸いです。

新卒の管理栄養士さんからすると、初めて社会に出る最初の職場は、希望を頂きつつも、不安もあり、緊張もするでしょう。せっかく就職しても、すぐ職場と自分に絶望し、もう私は管理栄養士に向いてないんだと言わんばかりに辞めていくケースは非常に多いのです。これは多くの場合貴方の能力の問題ではありません。管理栄養士の労働環境の問題です。

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管理栄養士のためのブラックな職場を避ける方法

管理栄養士の職場は二極化になりがち

管理栄養士の職場というのは、以下の2パターンになりがちです。

・業務量の過多で連日サービス残業

・組織の中ひっそり佇む窓際族となる

業務量の過多で連日サービス残業

業務の効率化ができておらず、作業量が多く、心身ともに消耗していくパターンです。マネジメント能力のないものや、ズレたボランティア精神の持ち主が責任者の場合、このような状況に陥りやすいです。ひどい職場だと、定時で帰宅できないばかりか、サービス残業を強いられ、しかもその原因はあなたの能力にあるのだと、自分のマネジメント能力のなさを棚に上げて、パワハラまがいを言ってくる責任者もいたりで、特に経験の浅い若い管理栄養士は心身消耗します。またこういった職場だと、多くの若手、中堅も責任者にゴマをすりはじめる「ごますり文化」が生まれます。喜んでサービス残業をします!サービス残業は当たり前です!と言わんばかりの思想が育ってしまい、まさに無料の奉仕は崇高のものだ、人生を捧げよ!と幟を掲げた大名行列が横行します。

幟

上写真は、幟(のぼり)。

日本中の栄養科では「無料奉仕の精神!マンセー!サービス残業!」と書かれた幟が事務所に掲げられているとかいないとか。


管理栄養士のバトルロイヤル

上写真:サービス残業中の管理栄養士の風景

この中で何人もの管理栄養士が脱落していく。


組織の中でひっそり佇む窓際族となる

できるだけ他職種と関わらず、組織からやれと言われた最低限の仕事だけ、経営には関与しません、改革?変化?なにそれおいしいの?という思想を極限にまで責任者の場合、大抵の栄養部門はその組織の中での弱小部門となっていることが多いです。極端な例ですが、管理栄養士という職種では意外にこういう人も多いです。ある程度やる気が合って入ってきても、新しい仕事には超消極的で、患者の栄養管理をするために病室へ行こうとすると全力で阻止される例もあります。

管理栄養士管理栄養士

私が若かりし頃、患者の栄養管理をしに病室に行こうとしたら、栄養部門の責任者から「看護師がびっくりするから辞めたほうがいい」と、全力で止められました。

栄養部門としては、職場内での管理栄養士の立場がとても低いので、給与も低く、他職種から下に見られがちという特徴があります(良い悪いはさて置き、この業界はそれでも良いという管理栄養士・栄養士の割合も多いです。)

新人採用について

新人を採用するにあたってはその組織ごとの経営や運営方針を見直し、経営陣による会議が行われます。
次年度に向けて、人員をどう配置・調整していくか、具体的には看護師を何人採用するか、管理栄養士の産休代替をどうするかなど、人事に関して話し合う会議です。

管理栄養士の人員増員を検討する2つのケース

一般的に栄養科で人員増員をする場合は、大きく分け、2つのケースがあります。

・職員が辞めたから補充要員

・業務拡張のための増員

ここでほんのりお気づきの方もいるかと思いますが、多くの場合において、組織が人員を採用する利用としては

・職員が辞めたから👉ネガティブな理由
・業務拡張のため👉ポジティブな理由

というケースが多いです。

※もちろん職場を辞めるにあたっては寿退職や、自身や家族の健康上の理由等、辞めざるを得ない場合ももちろんあります。しかし、一般的に人が仕事を辞めるということは、得てしてネガティブな理由が原因であることがほとんどです。

管理栄養士が辞める理由

管理栄養士が辞める理由として最も大きなものは、やはり人間関係でしょう。次に仕事内容、待遇等が挙げられます。

職員が辞めたことによる人員補充の場合、辞めた理由を知ることができるのが一番ですが、実質的に不可能です。仮に前任者と連絡が取れる場合においても、その職場を通してでない限り(つまり業務上の理由でない限り)避けておくことが無難です。

応募先の労働環境の評価

求人の頻度をみる

応募先の職場の労働環境を簡易的に評価する方法としては、管理栄養士の採用をどれくらいの頻度で行っているかを調査することです。
管理栄養士のような基本少人数編成(1人〜20程度)の職種の場合、毎年のように採用している職場は、つまり毎年のように人が辞めているわけで、ほぼ100%ブラックと言って過言ではないでしょう。(こういう職場は本当によくあります。一般的に名の通った病院や施設でもこういうことはよくあるので覚えておいてください。)

職場に多様性があるか

次にその職場の年齢層を把握しておきましょう。良い職場というのは多様性があります。ベテランから若手まで、様々な年齢、バランスの良い性別で構成されます。また管理栄養士だけでなく、他職種の職員構成にも気を配っておきましょう。極端に若い人だけということも危険です(パワハラ、モラハラ、セクハラが起きやすいです)。

逆に年寄りばかりだと、弱小科であることが多いです。

管理栄養士管理栄養士

できるだけ最小限の労力でお金を稼ぎたいと割り切れる人には、実は、とてもホワイトで良い職場だったりもしますが

科の責任者はどういう人間か

最後に責任者はどういう人間かということの把握をしておきましょう。
責任者の名前をグーグル検索やSNSで検索してみることをおすすめします。どのような学会で発表しているか、論文を書いているか、市民講座をやっているか、など調べておくといいと思います。なぜかというと、本名でSNSをやっている人や、学術活動をしている人、市民公開講座や同業者向けの講師などをやった経験がある人であれば、基本的には外の世界に晒されているわけで、良くも悪くも色々な評価を受ける立場です。そういう立場にいる人は、そうでない人と比較すると、一般常識や良識がある可能性が高く、当たりの上司であることが多いです。

逆に全く名前が出てこない人は、要注意です。コメディカル職というのは仕方のないことですが、得てして専門馬鹿になりやすく、また組織の一員として働いていたとしても、部外者からはどのような業務を行なっているのか把握されないため(※さらに管理職クラスの上長がおり、定期的なホウレンソウをしていたとしても、上長が管理栄養士やその業務に通じた人間でない限りは、業務内容の詳細は理解していません)、井の中の蛙で、妙にプライドだけが成長してしまったり、また思考が隔たり、バランスの欠いた社会人になってしまうことが多いのです。こういった人間が責任者だったりすると、下の人間は大変です。責任者というのは、職場労働環境をブラックにもホワイトにも変えてしまう影響力があります。特に新卒の管理栄養士である、あなたの大事な人生の期間を、どのように過ごせるかということは、勤め先の責任者にかかってくると言っても過言ではありません。必ず検索して調べましょう。医中誌検索、google検索、Twitter、Facebook等で調べてみましょう。

ブラックな職場の特徴リスト

管理栄養士におけるブラックな職場の特徴をまとめてみます

・毎年(あるいは2、3年おきに)求人を出している。
・職員の構成バランスの異常に隔たっている(若い人が多い。女だらけなど)
・責任者名前で検索しても全く引っかからない。あるいは極端に少ないか、何年も前のもの

これら一つでも当てはまったら注意です。

「当たり」職場の特徴

業務拡大のための増員

また管理栄養士の採用として、業務拡張ということであれば(例えば、管理栄養士の病棟配置にするとか、専門チームの専従・専任にするとか)あるいは、特徴的な管理栄養士を求めている場合(嚥下に強い管理栄養士など)は比較的当たりの職場であることが多いです。

これは、組織の管理栄養士のニーズが高まってきていることにより、組織あるいは組織における管理栄養士の成長が見込まれるからです。成長している組織は、多少忙しい時もありますが、一般的に本人のやる気さえあれば、周りからのサポートをいくらでも得ることができますし、それにうまく答えることができれば信頼も得られやすく、結果として自分たちで働きやすい職場にすることも可能です。

こういう求人に出会ったら、ブラック職場の特徴に当てはまっていないことを確認し、給与や年度昇給などの制度、また休みなどの自分のライフスタイルや希望と合致するようでしたら積極的に応募してみるのもいいかもしれません。

これから就職活動をする管理栄養士の卵へ

とにかく、OBや実際に働いている管理栄養士の知り合いに会いましょう。会って話を聞きましょう。SNSなどは単なるそのきっかけづくりで、たとえ信頼できそうな人にDMなどを送ったとしても、そこから価値のある情報は得られません。断言します。就活において本当に価値のある情報というのは実際に会ってコミュニケーションをとって、信頼関係を築けた上で得られるものです。

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保護者の方へ

辛辣なことを書いていますが、管理栄養士という職業は素晴らしいです。また今後は地位の向上も見込まれる職種です(著者希望的観測含む)。見守ってあげてください。
一つだけ、もし私なら、自分の子どもが管理栄養士養成校に在籍しており、今後就職活動において管理栄養士としての強く明確なビジョンを持っていないのであれば、(あるいは持っていたいとしても場合によっては)公務員の管理栄養士をおすすめします。理由は以前の記事にも書いた通りです。
お時間のある時にでもご覧ください。

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